脱下請を意図するブランディング戦略

先日佐賀県内のある地域でセミナーの機会があり、ブランディング戦略について登壇しました。そこで、ある中小企業の経営車から「我が社は、決まった仕様を決まった規格で製造し、納品する企業だから、ブランディングはピンとこない」と言われました(悪意はまったく感じませんでしたよ。笑)。

僕が「それは、元請け企業からの下請け業務が中心ということですか?」とお尋ねしました。

すると経営者「そうだね。今は受注も安定しているし、業績もいいから」と言われました。

僕は「ん?」と思いましたが、セミナー開始の時間になったため、議論は深めませんでした。

たしかに下請け企業(完全下請け)なら、受注は安定します。ただし、外部環境が安定しているときなら…です。

元請け企業を取り巻く環境が激変した時、皺寄せが来るのは下請け企業なのです。恐ろしいのは受注減、低価格要求、超短納期要求…多岐に渡ります。

つまり、緊急事態になればなるほど要求は厳しくなるし、元請け企業の経営方針に翻弄される訳です。その時!完全下請け企業はどうしますか?

考えたら恐ろしい…。今回の2年半に及ぶコロナ禍が教訓となるでしょう。

完全下請け企業こそブランディング戦略で、脱下請を!

自らの戦略で自らの価値を、自ら開拓したお客様に提供したビジネスモデルを長期的視野で確立することを推奨します。

経営はあくまでも「永続発展」が理想です。元請け企業と一緒に連鎖倒産…などという不幸を招かないためにも。

投稿日: 2022年6月8日 | 9:58 am

事業承継問題の中のM&Aの位置付け

今や中小零細企業を取り巻く環境の中で、最大の問題と言っていいい事業承継問題。せっかく育ててきた我が社の後継者がいない…などという事態はできるだけ避けたいと願うのが、経営者の普通の感情と言えます。

事業承継問題を解決する方法に、M&A(企業の合併・買収)というのがあります。

ところが、近年の傾向として事業承継=M&Aという風潮になりつつある懸念を持っています。

会計事務所系のM&A推進会社も、積極的にM&Aを提案する傾向にありますし、M&Aコンサルティング会社においては多額の利益を上げている事実もあるのです。

ところが、僕はあえて警鐘を鳴らしたい。

M&Aありきでの事業承継は、かなりのリスクを伴うことを…。

企業は「想いの集合体」です。想いというのか目に見えないもの…つまり経営理念です。

そのため、目に見える経営資源「ヒト・モノ・カネ」の売買で成立するM&Aを推奨する場合は、理念や価値観・社風の承継を想定しないとうまくいかないのです。

簡単にM&Aを語り、実行することはできません。あくまでも事業承継問題の解決方法のひとつ(ごく一部)がM&Aだということを認識しましょう。

僕は優先順位は極めて低く、まずは社内の人財を後継者として育てる。この戦略は第一のプライオリティであることを認識しましょう。

そのためには早期の事業承継計画を立案(10年単位)し、計画に沿った準備を進めていくことが重要です。

魂を込めて育てた自社を平気で売り飛ばし、キャッシュを得たいと思う拝金主義経営者なら話は別ですが…。

投稿日: 2022年6月6日 | 5:36 am

ブランディング戦略と企業業績の関係性ー2

ブランディング戦略と企業業績の関係性…詳細に説明していきます。

前回、ブランディング経営の内容とは「高品質・高価格・高付加価値」経営であると主張しました。ブランディングにより、顧客化が実現するということも説明しました。

では具体的に業績数値に与える影響を説明します。

まず「損益計算書(P/L)」から。損益計算書の一番上にある経営指標は?「売上」ですよね。この売上というのは、「客数×客単価」という分解式で表されます。当たり前ですが、他にもあります。「販売商品点数×販売商品平均単価」でも同じ売上高が計算されます。

売上を上げていくためには、「客数」を増やす(客数は横ばい)、「客単価」を増やす(客数横ばい)、「客数」「客単価」両方増やす…。この3つの方策しかありません。

この「客」の正体は?これこそ「顧客(ファン、リピーター)」であること。これに尽きるのです。

けっして「たまたま客」ではない「わざわざ客」。この顧客(取引先)を一人(1社)でも増やしていくこと。これがブランディング経営の売上に与える最大の影響です。

中小企業経営において、最大のリスクは何か?それは「客離れ」という現象です。

お客様(取引先)の数が減少していけば、「客単価」を増やすしかありません。「客単価」というのはとどのつまり「予算(財布の中身)」のことですから限界がある訳です。

結果的に客数現象は、最大の減収要因として認識しましょう。また、客離れを起こす要因は「内部環境にある」ということをお忘れなく。

景気や社会現象に要因があるわけではないのです。

投稿日: 2022年6月1日 | 5:51 am

ブランディング戦略と企業業績の関係性ー1

先日、佐賀県中小企業診断協会が受託する「佐賀県プロ人財戦略拠点事業」の一環で、セミナー登壇しました。テーマは「業績向上に直結する中小企業ブランディング戦略」というもの。

実例や事例、研究・取材結果を交えた机上の空論でないブランディング戦略を紹介しました。このセミナーは2部構成でして、来週(6月2日)に2回目を実施します。

県内4ヶ所をめぐるセミナーで、先日は鹿島商工会議所で登壇したのです。

ブランディングが業績に及ぼす影響…。診断士としては当たり前に考えるテーマなのですが、経営者からすればピンと来ない課題なのかもしれません。

あえて断言しますが、中小企業経営は須く「ブランディング経営を目指すべき」ということ。

ブランディング経営は、結果的に高業績をもたらします。

ブランディングをもっと分かりやすく表現すると「高品質・高価格・高付加価値」経営のことです。

この順番には意味があり。「高品質が高価格の裏付けとなり、高付加価値を実現する」とうわけです。ここで…。

最も大切なのは「高品質」であるということ。高品質でなければ、高価格を設定できません。もし低品質で高価格を設定したら、それは「ぼったくり」ということになります。

当然、顧客化には繋がらないのです。マーケティング戦略の最大の目的は「顧客化(ファン化)」すること。

顧客の絶対数というのが、中小零細企業における経営基盤の実態なのです。

これから数回に渡り、ブランディングが実際の業績に与える影響について解説したいと思います。

 

 

 

投稿日: 2022年5月30日 | 5:36 am

関節部門は効率的に…直接部門は手間暇かけて…

DX(デジタルトランスフォーメーション)ろいう概念が、中小企業経営に与える影響について考察したいと思います。IT技術を駆使して(使いこなして)、経営をスムーズに運営するという考え方です。しかし、これは経営資源に乏しい中小企業にとって、全肯定する考え方ではありません。というのが僕の所見です。

結論を言うと、中小企業の関節部門(総務や経理、事務関係)は、DXを駆使して効率化を図るほうが断然いい。一方で、直接部門に対して無理に導入すると、ともすればUSP(絶対的な強み)を失ってしまうことになりかねないのです。

デジタルの良さは、圧倒的に効率性です。アナログと違って、手間暇がかからない管理・戦略が可能になること。

しかし、中小零細企業の良さは実のところ「手間暇かけたお客様との繋がりや絆」にあると言えます。

つまり関節部門にはDXが効果を発揮しますが、直接部門にはDXは諸刃の剣となりかねないリスクもあるということ。

中小企業経営のブランディングを推奨する立場から主張しますが、中小零細企業のブランディングの源は「めんどうくさい」「手間がかかる」「時間が必要」「非効率的」…こういうポイントに眠っています。

オンリーワン戦略を目指すべき中小企業経営においては、大企業戦略とまったく違うステージで勝負しなければなりません。

価格競争を回避し、逆に価格主導権を握る…これが中小企業経営の理想ですから。

お客様との接点に立つ直接部門は、過度に効率性を追及するのでなく、アナログ的な「心と心のつながり」で勝負したいものです。

投稿日: 2022年5月23日 | 5:53 am

業績マネジメントの考え方

日々刻々と上下する業績は、経営者が最も気になるファクターでしょう。しかし、業績というのは所詮結果現象にしか過ぎません。「がんばった結果」「経営理念に向き合って日々努力した結果」「人を大切にする経営にに向き合った結果」なのです。

業績は管理するものでなく、マネジメントするもの…これは僕の主張です。マネジメントという文言には「モチベーション」の概念が含まれ、管理よりもマネジメントを推奨することが基本となります。

営業会議などで業績のPDCAを回していくとき、メンバーのモチベーションを抜きにしては不可能です。特に企業経営の血液たる「金=カネ」の厳選である営業・販売に関するサイクルならなおさら。

では、スタッフのモチベーションが下がる時はどんな時か…。様々ありますが、大きな要因のひとつに「高すぎる業績目標」というものがあります。これは百害あって一利なし!まさに愚策とも言うべき戦略です。

このブログで時々紹介しますが、目標管理制度という名の下、「高い目標をあえて設置し、それに向き合うPDCAを回す。結果的に目標に届かなくても、肉薄することが大事」とする戦略がありますが、全くのナンセンス。

そもそも目標というのは、管理するものではなく「向き合うもの」なのです。

ですので、「がんばれば現実的に届く」目標が妥当です。モチベーションは「小さな成功体験」により上がっていくもの。

業績マネジメントは、最前線メンバーのモチベーション重視。高揚感あふれるマネジメントを実行していただきたいものです。

投稿日: 2022年5月9日 | 5:28 am

値引き戦略は愚策である!

中小企業経営における様々な会議に参加していると、業績向上のための販促戦略を考案する場面に直面します。そこで大きく勝敗を分けるのが、価格に関する議論です。

中小企業経営における最大のタブーは価格戦略である…これは僕の普遍の主張ですが、様々な中小企業経営において未だに議論されていることが多いです。価格戦略そのものは、例えると麻薬のようなもの。これでしか打ち手のない市場…これがあるとしたら、その商売は終わっているということになります。

それこそ、中小零細企業にとってレッドオーシャンであると言えます。

残念ながら、士業をはじめとする中小企業経営支援の専門家の中にも、値引き戦略を推奨する輩もいます。

値引きという愚策は、利益の源泉である「粗利益(売上総利益)」を圧迫します。そのため、「いくら稼いでも儲からない」という現象に陥ります。これは、中小企業経営にとって大きなリスクとなります。

また値引きを柱とした販促戦略は、販売(営業)スタッフのプレゼン力を阻害します。

値引きしか打ち手がない商品は、そもそも中小企業が揃える商品ではない…とも言えるのです。

中小企業経営は、オンリーワン戦略である…。オンリーワンとは「差別化」のことであり、商品政策においては「他社にはない、こだわった素敵商品を揃える」ということになります。

中小企業経営者の皆さん。御社の商品政策は間違いないですか?

まちがっても、販売(営業)スタッフの「口八丁手八丁」による販売戦術にたよった販促戦略を立ててはいけません。

チームの疲弊を招くだけです。

投稿日: 2022年5月2日 | 5:06 am

ハートで勝負する中小企業、仕組みで勝負する大企業

先日のこと。小生がお手伝いしているクライアントで営業戦略会議を実施していました。販促企画について議論していましたが、「それは手間がかかる」とか「ん〜それは時間が必要」とか「面倒くさい」などというネガティブな発言が出ていました。

すかさず小生は、「中小企業は、面倒くさいとか手間がかかるとか、そういう取り組みこそ戦略として実行すべき。そこにチャンスがある!」と助言したわけです。

例えばCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)を考えた時、中小企業は「お客様ひとりひとり(一社一社)との心のつながりを大切にすべき」なのです。まさに、中小企業はハートで勝負すもの。

逆に大企業は「仕組み」で勝負をかけてきます。仕組みを整えて、効率化し、最終的に価格で勝負してくるわけです。

中小企業が生き残るためには、価格競争を回避しなければなりません。つまり「多少価格が高いけど、いいものだし、あなたから売ってもらいたい」とお客様から思われる関係性づくりこそ重要なのです。

中小企業が、さまざまな仕組みに依存すると、細やかな対応力や暖かい(人間味のある)接客・接遇などが薄れていく傾向にあります。

価格競争できない中小企業経営は、「商品・サービス」「情報・ノウハウ」「人財・メンバー」「企業そのものの希少な取り組み」この4ファクターでブランディングします。

そして心の通った、お客様との関係性構築を目指す必要があります。

ついつい人間は「面倒くさい」ことを回避する傾向にあります。「面倒くさい、手間がかかる」…だからこそ中小企業のチャンスが生まれるのだということを認識しましょう。

投稿日: 2022年4月27日 | 8:27 am

ご縁という絆、繋がり、そして幸福感…

福岡市内。障がい者の方々を警備員として雇用し躍進中のATUホールディングス株式会社。先日(4月23日)は、社員懇親会にお呼ばれして楽しんできました。

恩師:坂本光司先生の愛弟子でもある、経営者:岩崎龍太郎さん。約1年前にクラインアントとしてご支援させていただいています。この会社はスゴイ!障がい者雇用率は約6割を誇ります。障がいを持つ方々に「働く喜び、働く幸せ」を提供している…そんな会社なのです。

待ち合わせはココ。福岡市西区今宿にある「カリフォルニアBBQ」!

懇親会(バーベキューパーティ)は、午後5時からということで、岩崎さん操船のモーターボートでルアーフィッシングに繰り出しました。

最近船舶免許を取ったとは思えない操船技術!岩崎さん、カッコいい!!

会計事務所の橋本くんです。まだ27歳と若い監査社員ですが、とても熱心で優秀なサポーター。

そして、小生。楽しそうな雰囲気が伝わりますか?

17時からはバーベキュースタート。ATUホールディングスの社員のみなさんは、とても仲がいい。愉しい時間はあっという間に過ぎますね。

経営者である岩崎さんご夫妻とパシャリ!

とても幸せで、有意義で、愉しくて…。ご縁があったことに、改めて感謝する1日でした。岩崎さん、本当にありがとうございました。

中小企業診断士としてプロコン活動をしていると、クライアント様の酒宴やイベントにお呼ばれすることがよくあります。僕は、こうしてお呼ばれすることは、信頼・信用されているバロメーターだと思い、可能な限り参加させていたいています。

今日も本当に素敵な1日でした。

 

 

投稿日: 2022年4月25日 | 5:13 am

中小企業診断士のマインドセットーARIKATA【68】

【コンサルティング品質の条件…「実績表示の是非」】

経営コンサルタントを名乗る業者や、中小企業診断士が意外と「コンサルティング実績」を公表していることに驚かされます。例えば、ホームページやブログに「弊社のコンサルティング実績」と題して「売上拡大◯◯%達成」や「顧客獲得数昨年比◯◯人達成」などと、あたかもコンサルタントの実績のように記載している現象です。

自称コンサルタントなら…さもありなんと思う程度です(気を悪くなさらないでほしいのですが…)。僕の周囲にいる経営コンサルタントの先輩は、決してそんなことはなさらない。しかし、中小企業診断士自体がそんなことをインターネットなどで公開していると、怒りを通り越して呆れてしまいます。

その輩は、広告手段として「コンサルティング実績」を公開して、自らの手柄化しているのでしょう。しかし、この行為自体がブランディング価値を落としていることを認識した方がいい。

断言しましょう。コンサルティング支援先の定量的成果(業績、売上・利益、客数・客単価など)は、100%クライアント先の実績です。

コンサルタントは支援者でえあり、サポーターであり参謀役であり助言者であり、共感者でしかない。これから、コンサルタントしての価値を上げていきたいと考えている中小企業診断士の皆さん。

あえて自分の価値を落とすような”恥ずかしい”公表は絶対にやめましょう。コンサルティング実績を我が手柄としなくても、お仕事の依頼はありますから。

投稿日: 2022年4月21日 | 5:05 am