社長の思い、社員の思い…そのギャップ

経営者であれば、我が社のことを自分のこととして考えて欲しいと思うもの。しかし、その思いは末端社員に行けば行くほど、薄れていくことが実情です。

最近本当に思うことは、所属会社のロイヤリティが高い社員が揃う会社は、組織的に強い…ということ。

強い組織(チーム)は、さまざまな課題に立ち向かうパワーが違います。当然、解決方法も無限に創っていきます。

中小企業経営は、一騎当千の強者が揃うチームが理想。企業は人財力が全てですから、経営者の最大の仕事はある意味「人財採用と育成」と言ってもいいでしょう。

中小企業経営にとって、社長の思いを現場の末端社員まで伝え、共有、共感してもらう。これは、とても大切な社長業なのです。

意外と自分の思いと、社員の思いとのギャップに気づくかもしれません。

当たり前です。社長は会社が第一、社員は自らの幸福が第一ですから。

ですからなおさら、会社の経営理念が社員の幸福感にベクトルを合わせることが重要なのです。

経営者の皆さん。社員と対話をしていますか?対話というのは「業務の連絡や伝達事項」ではありません。

会社の理念や方針、そして課題解決や身の上話など…一人の人間として思いをやりとりすることです。

実はこの対話というもの。とても重要で、日常の中で自然に対話できている会社は、「あり方=姿勢、マインド」を社長から学ぶことができます。

「あり方」を学んだ社員は、スキル研修などをしてさらに教育すると、とても伸びてくれます。

逆に、対話のない会社で「やり方=スキル」研修などを施しても、効果は薄い現実があるのです。

投稿日: 2021年11月1日 | 5:07 am

中小企業診断士のマインドセットーARIKATA【51】

【中小企業診断士の成長プロセス 〜診断士の観察力〜】

中小企業診断士として、クライアントの課題解決にあたり”お役に立つ”仕事ができるまで、一定の成長プロセスを辿る必要があります。

いざ資格を取得して、経済産業省に登録を済ませたが、まったく知識やスキルを使っていない…そういう診断士があまりにも多い。実にもったいない話です。

何度も主張していますが、すべての国家資格が「取得・登録したからがスタート」です。そのため、登録後の成長プロセスがとても重要となる訳です。

そこはもう、第一次・第二次試験の答案結果や点数など、まっっっっったく関係ありません!

自らの人間性や知識・経験、人的ネットワークを駆使して「いかにクライアントのお役に立つか?」という情熱と創意工夫が求められるだけなのです。

このシリーズ「ARIKATA(あり方)」において、そのマインドは一定の提言をして参りました。

ここでは、成長プロセスに焦点をあて、書いていきたいと思います。

中小企業診断士に必要な能力。まずもっとも磨いてもらいたい能力に、「観察力」というものがあります。これは、あらゆる角度から中小企業を”診る”力と言ってもいい。

間違っても、財務諸表やアンケート(モラールサーベイなど)だけによるモノではありません。

経営者・幹部・社員からのヒアリング。

社内の掲示物や空気感。整理整頓の状況。電話応対の接遇力。経営者の価値観。会社の雰囲気やモチベーションの度合い…。商品・サービスのポテンシャル(潜在能力)。あらゆる観察ポイントを診ていく必要があります。

重要なのは、価値を見抜く「観察力」です。

中小企業診断士は、未来志向型のコンサルタントです。あくまでも「明るい未来」にベクトルを向けた、企業の診断スキルを磨いてください。

具体的な「観察ポイント」を列挙しておきます。

⒈   経営者の価値観

⒉   社内の様子(空気感、掲示物、5Sなど)

⒊   社内メンバーのモチベーションやエネルギー

⒋   電話や来客にまつわる接遇応対

⒌   取扱商品(サービス)の品質・将来性

⒍   CS(顧客満足)度

⒎   関係先・外注先・協力会社への対応

⒏   教育コスト・研究開発コストとその方法

⒐   幹部・リーダーのリスペクト度合い

⒑   財務諸表(特に自己資本比率と経常利益率)

以上10ポイント。経営者やコンサルタントでも、是非「観察力」を上げるポイントとして、留意していってほしいものです。

投稿日: 2021年10月29日 | 5:46 am

中小企業の企業価値評価について思う…

大企業のそれと違い、中小企業の企業価値は算定が難しいと考えています。なぜなら、まだまだ日の目を見ない「開発中の商品」や「申請中の知知的財産」、「社長の人的ネットワーク」…何よりも「幹部、スタッフの人財力」…。

すべて価値算定が難しいファクターです。

先日も書きましたが、経営者はM&Aを考える前に、自社の価値分析を詳細かつ冷静に実行することが大切です。そのためには、我々中小企業診断士のような未来志向型のパートナーと、今後の承継戦略について早くから立案しましょう。

もしかしたら、価値判断によってはM&Aよりも「信頼できる人財に後を継いでもらう」方がハッピーになるかも知れません。いや、むしろお金で売買するM&Aよりも、社員・メンバーが幸福感を担保できる場合が多いのではないでしょうか?

残念ながら、会計事務所や金融機関系のコンサル会社では、業績数字と現状財務状況に偏った企業算定になりがちです。

経営は何があるか分からない。ヨット航海のようなものです。突然、追い風が吹き(いや、追い風を自ら捉え)、逆転が起こることも十分にあります。

特に努力を惜しまず、資源インキュベートしている会社は十分に逆転が可能なのです。

コロナ禍をうまく乗り切り、苦しんでいる環境を脱して逆転プロセスを描くためにも、日頃の「商品(サービス)開発」「人財育成」「品質向上施策」「知的財産経営」などの努力を惜しまないようにしましょう。

日頃の継続的な企業努力こそ、試される時代なのですから。

投稿日: 2021年10月28日 | 5:32 am

会計事務所がM&Aを提案するとき…

会計事務所(税理士事務所)の最近の傾向として、企業のM&Aを手がけることがあります。後継者のいない企業にとっては、事業継続のための手段としてM&Aがあるのというのは十分理解できます。しかし、「M&Aありき」の提案はやめていただきたいと切に思います。

最近ありましたが、僕のクライアントに対して「M&Aも選択肢ですよ」と会計事務所担当が提案した例。これは、「事業継続をあきらめる選択肢もありますよ」という提案と論理的には一緒です。

その会計事務所は、M&Aを手がけるコンサル会社をグループに置いているから、提案した結果なのでしょう。

企業というのは、想いの集合体です。これまで苦労してきて長年商売をされてきた我が社。きっと子供のような愛情を持つのが、経営者の普通の感情のはず。

それを、業績や資金繰りの状況だけで判断して、M&Aの話をするとは…。これが会計事務所の現状ですね。

経営には目に見えない(数字に現れない)価値があります。当然、打ち手(戦略)もあります。その戦略実行の選択肢がある限り、優先順位のナンバー1は「打ち手の実行」でしょう。

「万策尽きそうだ、後継者もいない、事業意欲も下がっている…」という判断を経営者がしたとき、初めてM&Aを検討すべき。

「事業が好調なうちに、売った方が高値で売れる」から。これがM&Aコンサル企業の論法でしょう。ところが、それこそ机上の空論です。

今回の例も一緒。まだまだ前向きに戦略実行しようとしているときは、会計事務所もその方針沿った財務コンサルをしていただきたい。

企業は「金では換算できない価値がある」という考えを持たないと、今後の会計事務所も将来性が危ういですよ。

M&Aは最終手段。十分なデューデリジェンスを行い、できるだけ事業継続を第一に考えて、タイミングをみたM&A提案をしてほしいものです。

企業を数字(結果)だけで判断してはいけないのです。

投稿日: 2021年10月27日 | 5:43 am

M&A戦略への警鐘

近い将来、いやすでにそういう時代の真っ只中かも知れません。中小企業経営(特に地方の企業)や下請け企業の、事業承継は深刻さを増していきます。

価値のある経営をされているのに、後継者が不在なために事業を断念せざるを得ない…。そのリスク回避のひとつに、M&A戦略があります。僕は個人的に、M&A戦略推奨派です。しかし、様々な条件をクリアした場合の話です。

好調な企業が、事業承継に困っている企業を買収し、社員の雇用やお客様に提供する価値を守っていく…この取り組みは、本当に素晴らしいと考えています。

ただし、M&A戦略自体は机上の空論では片付けられない、深刻な課題が存在するのです。

それは、人間の感情や企業の社風、理念や価値観といった目に見えないファクターです。目にえないからこそ、厄介であり手間暇かけてケアしなければならない課題なのです。

M&Aに失敗した場合、それ双方にとって多大な不幸を招きます。

M&Aを手がけるコンサルタント会社も存在しますが、気をつけて支援を受ける様にしてください。

重要なのは、買収した会社から来る経営者(幹部の場合もあります)が、リスペクトに値するかどうか…ということ。そして、彼(彼女)にマネジメントパワーを発揮できる人間的魅力と、問題解決力が備わっているかということが重要なのです。

間違っても、売買終了時点で支援が終わり…というコンサルティング会社には要注意です。

M&A戦略は、買収してからがスタート。軌道化(3年間ほどのモニタリングと、問題解決支援)を覚悟して臨みましょう。

投稿日: 2021年10月26日 | 5:52 am

精神論だけでは闘えないが、精神論がないと闘えない

中小企業経営は、何より心が大切です。お客様に対する心、社員に対する心、地域社会に対する心、外注先・協力会社に対する心…すべて大切なファクターです。

心…つまり精神なのです。中小企業は精神がとても大切であり、精神が伴わないとせっかくの企業価値を、正しくお客様や社員に伝えることができないのです。

しかし、精神論だけでは闘っていけないのが実状。その上に「やり方」である政策や戦略が乗っかってくるのです。多くの経営者が、すぐに「やり方」を知りたがります。

セミナーや講演講師を務めたあとは、なおさら。「その方法を教えてください」という質問が来ます。これ自体は大切なことなのですが、セミナー自体のテーマも「やり方」を教授する内容があまりにも多い。

例えば、「人財の育て方」「粗利益の上げ方」…すべてやり方です。書店に行くと、その手のタイトルのビジネス書が何と多いことか…。

はっきり言いますが、ビジネスにはテッパン手法など存在しません。個別具体的な課題には、個別具体的な手法で、個別具体的に戦略実行して解決していくしかないのです。

その戦略実行を推進するモチベーションとなるのが、企業精神なのです。精神が伴わない戦略は、推進していくことが難しい。テクニックに走ってしまうと、継続ができないからです。

その企業精神を文言にしたものが、経営理念と呼ばれるもので、何のために経営するのか?を見える化したフレーズ。すべての戦略(やり方)は、理念にマッチしたものでなければ、うまくいかないのです。

投稿日: 2021年10月25日 | 5:46 am

コンピテンシー理論による昇進制度

中小企業会社経営は、階層形になっていますよね。企業の規模が拡大していくと、社員の人数も増えていきます。当然ですが、ガバナンス(統治)を保つために、階層形をつくって分業(役割分担)や指示命令系統ラインを明確にしていく必要があります。

ちなみに、組織図は「誰が偉いとか上下関係を示したモノでなく、ただの指示情報のラインを見える化」したものにしか過ぎません。

さて、人事は中小企業経営の中で非常に重要な戦略です。その人事戦略の中で、昇進制度はかなり練って戦略立案する必要があります。とかく昇進制度は重要で、昇進すると役職者と言うことになりますから、部下がつくことになる訳です。

中小企業経営にあるあるなのが、スキル=マネジメントという間違い。例えば、「販売力しかない人が店長になる」という間違った事例です。

リーダーの最大の条件は、「人から慕われる人間的な魅力があるか?」です。「仕事ができる=人間力」では必ずしもない訳です。

僕も経験がありますが、人間的におかしい人が上司になると、それは悲劇です。部下は上司を選べませんから…。

そこで、コンピテンシー理論の導入による昇進制度を推奨しています。

つまり各役職の「あるべき姿、言動」を見える化して、昇進の判断基準にする手法です。そのコンピテンシー条件に合わない人を幹部にしてしまうと、後々大変な事態になります。

下手をすると、チーム・組織崩壊を招きかねません。

昇進制度は、明確なコンピテンシー条件を具体的に文言化して、昇進の際の判断基準としてください。

投稿日: 2021年10月22日 | 5:27 am

投資型経費と経費型経費

昨日のブログ(研究開発費の話)を読んだ経営者から、メールで相談がありました。了承を得ましたので、ブログで紹介したいと思います。

メール内容…

「毎月ですが、顧問契約している会計事務所から月次報告があります。その際、担当者から経費(販管費)に関する助言があります。内容は、なんとか経費を下げましょう…の一点張りで、具体的にどの経費を下げていいのか分かりません。担当者に聞いても、全体的に…と言うだけで具体的的には指摘してくれないのです。何かいいアドバイスをいただけませんか?長引くコロナ禍で、売上は大幅ダウン。経費削減が必須なのはわかっているのですが…。」(原文一部修正)

前職が会計事務所だった経験から言いますと、監査担当者は具体的なアドバイスをしてくれないのが普通です。というかできないのです。彼らの思考は基本的に、法律上問題ない会計処理をして納税額を示すこと…ですから。

節税のアドバイスができる監査担当者なら、結構優秀だと思います。それを前提にアドバイスしますが、経費削減に関しては優先順位を考慮して断行します。

つまり、削減を検討する順番があるのです。資源に限りのある中小企業経営に至ってはなおさら…です。

とかく投資型(未来型)経費である、教育費、宣伝広告費、研究開発費…そして人件費。これは削減を極力しない方向で検討します。

検討すべきは経費型経費です。内容は、地代家賃、水道光熱費、諸会費、消耗品費…そして接待交際費などです。

投資型経費の削減は、企業の体力を削いでいきます、乾坤一擲の勝負をする時のために、投資型経費の消耗は極力優先順位を下げましょう。

投稿日: 2021年10月21日 | 5:52 am

研究開発費の話

中小企業経営は差別化の経営(オンリーワン経営)が理想とされます。お客様が欲しくたまらない商品を、開発する(仕入れる)ことが重要な戦略手段となります。

僕はどんな業種においても、中小企業経営は「研究開発費」というものを予算化し、計上して、新しい商品(サービス)を創造していくことを推奨しています。

しかしながら、中小零細企業においてはまだまだ、研究開発という重要戦略を軽視している傾向が伺えます。中小企業は「新しい価値の創造行為」といっても過言ではない。そのためには、弛まぬ開発戦略は必須なのです。

言うまでもなく、研究開発費というのは「未来型(投資型)経費」です。投資なき経営は衰退していきますから、開発そのものを怠る経営をしていると、商売の拡大は望めない訳です。

開発戦略の立案と実行によるオンリーワン戦略に着手しないと、つまるところ「価格競争にさらされる」ことになる訳です。

中小企業経営の最大のタブーは「価格戦略」ですから、経営そのものの力を削がれるということになります。

法政大学時代の恩師・坂本光司先生は、中小企業の売上高対研究開発費率を5%を目処に、限りなく上げていく努力が必要と説かれています。

僕は、せめて売上総利益(粗利益)の5%を目処というのが、現実的かと考えています。

ともかく中小零細企業は、研究開発を重視して経営戦略実行していくことが求められます。タブーである価格戦略を回避するためにも、新しい価値を生み出す研究開発に注力していきましょう。

投稿日: 2021年10月20日 | 5:01 am

中小企業経営者のARIKATA学【プロローグ】

先日会社のオフィスで、書類やデータを処理していた時のこと。名刺交換した経営者の数はおよそ1000人。面談した経営者は、およそ500人であることに気づきました(大学院時代〜会計事務所〜独立後に渡る14年間)。

この仕事をしていると、中小企業経営者の「あり方やマインド、特徴」というものに強制的に触れ合うことになります。当然ですが、リスペクトできる経営者像、リスペクトできない経営者像が浮き彫りになるわけです。

また、中小企業診断士は経営コンサルタントですから、経営者の人間学を見つめなければならない仕事です。自然と、その「あり方」を研究する機会に触れるわけです。

およそ20年間の中小企業経営の現場を駆け回った経験から、実に様々なタイプの中小企業経営者と触れ合ってきました。その特徴も、分かってきました。その中で、成功する経営者、失敗する経営者の「ARIKATA」が明確になってきました。

中小企業経営者の皆様、あえて問います。あなたは、社員からリスペクトされていますか?慕われていますか?信頼されていますか?

自社の社員からリスペクトされない社長が、お客様から信頼をかと勝ち取れるでしょうか…。

続けて問います。支援者・協力会社、ステイクホルダーを見下したように接していませんか?「こっちは金払っているんだ!」という考えのもと、無理な要求をしていませんか?

中小企業は、支えられる経営をしていく必要があります。協力者(会社)を社外社員として大切に接していますか?

このブログを通じて、改めて中小企業社長のマインドや姿勢を啓発情報として、発信していきたいと考えています。

経営は「やり方」ではない「あり方」が問われるというのは、恩師・坂本光司先生の言葉。

この言葉の意味を、毎日経営の現場を駆け回る度に噛み締めている今日この頃なのです。

この「あり方」を、現場からの生きた発信という形で書いていきたいと考えているのです。長い長い執筆になりますが、時々このタイトルで書いていきますので、是非ご参考にしていただければ幸甚です。

 

投稿日: 2021年10月19日 | 6:25 am