もっと”いい会社”に…

長野県伊那市にある伊那食品工業株式会社。7年ほど前の前職(会計事務所)勤務時代に、企業視察旅行研修を企画して訪れた時のことを思い出します。伊那市という、決して都会とは言えない町中に広大な敷地を持ち、地域住民の方々から愛されてやまない伊那食品工業の取り組みは、プロコンとしての僕のハートを刺激しました。

伊那食品工業の経営理念(企業理念)は「いい会社をつくりましょう 〜たくましく、そして やさしく〜」です。いつ読んでも、ストレートで熱く、想いの込められたフレーズだと感激します。

中小企業診断士として、現場を駆け回っていると全ての中小企業が「いい会社」として成長してほしいと思います。伊那食品では、「いい会社」を「単に数字上の業績が良いというだけでなく、会社を取り巻くすべての人が”いい会社だね”と言ってくださる会社」(伊那食品工業ホームページから抜粋)と定義しています。

まさにその通りだと思う。周りの人は俯瞰して第三者的に評価をくだすでしょう。周囲から「いい会社だね」と言ってもらえるような会社に勤務すること…それは、ハッピーという言葉で表される現象です。

”いい会社”は、メンバーのモチベーションが高い。言われたことだけでなく、自ら様々なことを考察し提案します。そんな社風を形成しています。逆に何も言えない、発言できないような社風は、モチベーションを著しく下げ、成長を促すことができません。

社員の成長は、会社の成長に直結します。会社は”ヒト=人材・人財”の集合体だからです。

また、”いい会社”として周囲に認められると、”選ばれる会社”になります。人材から、取引先から、ステークホルダーから…。選ばれる会社になることが、最高の企業ブランディング現象です。

まだまだ、「業績が高い会社=いい会社」という勘違いをなさっている方々が多い。業績はあくまでも結果減少であり、「いい会社」として評価された結果なのです。

「業績がいいから”いい会社”とは限らない。”いい会社”だから業績がいい。」のです。

投稿日: 2020年12月7日 | 6:56 am

中小企業診断士のマインドセットーARIKATA【45】

【中小企業診断士が成すコンサルティングサービス:新入社員研修会−②】

前回日に引き続き、新入社員研修会のベターパフォーマンスについて考察していきます。階層別研修会の中でも、新入社員研修会は特に重要な意味合いを持ちます。対象が新卒や既卒(第二新卒)ならば尚更です。彼ら彼女たちは、期待と不安を抱えながら入社します。不安を少しでも払拭し、期待をさらに大きくできるいい機会だからです。

経済団体や経営コンサルタント会社が開催する、集合型の新入社員研修会があります。内容は、新社会人としての基本的なマインドと基本的な動作(所作)について…です。どの会社やどの業種・業態にも通用する共通内容的な研修会ですので、ある意味それだけでは不十分です。

そこには、個別具体的な研修内容が含まれていません。それは、独自の経営理念の周知理解を促す内容や自社の経営方針に関する内容です。

何事も大切なのは”心””ハート””マインド”です。所作的な技術は、二の次でいい。まず、新入社員に伝えて理解を促すべき内容は、「我が社の価値観」と「我が社の方針(向かうべき方向)」です。

したがって、所作・接遇などの技術的な研修と併用(できれば先行)して、自社独自のプログラムとカリキュラムを立案して、研修会を実施していくことが大切です。

その際、ユニークで興味深い内容を盛り込むこと。圧迫型で厳しいだけの研修会が求められる時代は、とうの昔に終焉しました。

例えば、エンターテイメント性を盛り込んだワークやチーム対抗で競うようなプログラム。厳しい中でも一生の思い出に残るような研修内容で、新入社員を迎え入れたいものです。

投稿日: 2020年12月6日 | 9:22 pm

中小企業診断士のマインドセットーARIKATA【44】

【中小企業診断士が成すコンサルティングサービス:新入社員研修会−①】

年末になり、企業においては人財採用がさらに活発化してくる時期です。特に人本主義経営を実践すべき中小企業においては、来年4月に入社してくる(新卒)新入社員の研修会を企画・予算だてする頃でしょう。

新入社員研修会は、どんな規模の企業においても必須の取り組みです。「いや〜うちは零細企業だから…」とか「予算立てしてまで、実施する余裕がない」などの理由で向き合わなければ、大切な人材が育つことなく退職してしまう事態になりかねません。

企業は最終教育機関ですから、「社会人を育てる機関である」企業の社会的責任はとてつもなく大きいのです。

さて、新入社員研修会を担うのは、インストラクターが多いのですが経営コンサルタントである中小企業診断士も、お仕事として依頼されることがあります。実際に僕もお手伝いしています。

ひと昔前と違い、圧迫型の研修会は古い…という内容を以前のブログで書きましたが、新入社員研修会も工夫が必要です。どんな工夫かというと「参加者が厳しくも楽しめる研修内容を企画立案する」ということです。

”鉄は熱いうちに打て”と言いますが、”打ち方”が変化しているのでしょう。特に新入社員研修会においては、企業側は「Welcome Our Company!」というマインドを持って研修内容を立案することが重要です。

社会の厳しさを教えることはもちろん重要です。社会の厳しさは、働いていると必ずぶち当たる壁ですから、研修会ではあえてそれを植え付けるのでなく、「なぜ、人は働くのか?」などの目的意識を徹底理解してもらう内容にしましょう。

投稿日: 2020年12月3日 | 10:41 pm

企業が新規拠点進出(新店舗出店)を考えるとき

8年前にコンサルティング支援をしていた会社…。当時は新進気鋭のオペレーションで、躍進中の会社でした。あるきっかけで、コンサル支援が終了し(関係が悪くなったわけではないですよ…念のため 笑)、あれから8年。閉店しているお店を見かけました。

度重なる出店戦略のため、資金繰りが大変なことになっているという話は聞いていましたが、閉店しているお店を見ると、悲しい気持ちになりました。

当時から社長は積極戦略を敢行する方で、少し”危ないな”との感覚がありましたが、支援を終了した以上、助言もできずに現在に至ることになりました。聞いた話では、積極路線を勧めるコンサルタントが入っているとのことでしたが、行き過ぎた出店戦略が裏目に出た結果でしょうか。

コロナ禍の影響も打撃だったのでしょう。この難局を何とか切り抜けてほしいと切に願います。

企業が新しい拠点や店舗を構えるとき、重要な判断基準として「任せるリーダー(拠点長)が存在するかどうか?」があります。

間違っても損得判断(儲かりそうな立地や環境)で意思決定しないこと…です。

会社の経営理念を体現でき、メンバーに伝えることができ、共有・浸透させることができ、率先垂範できるリーダー。そんな拠点長が育ったと思う時に、新規拠点進出を構想しましょう。

そんなことではタイミングが合わない…とお考えの経営者もいらっしゃるでしょう。

だから、来るべきチャンス(機会)に備えて、日頃から人財育成に向き合ったかどうかが問われるのです。

投稿日: 2020年12月1日 | 5:22 am

経営の足腰(基盤)を強化する方法

コロナ禍における第3波が到来している今日この頃ですが、飲食店を中心に存続が危ぶまれる会社も多いですよね。このような外部環境(自助努力では如何ともしがたい環境)には、適応していくことが重要…と思います。しかし、適応という言葉を具体的に噛み砕いて説明できるコンサルタントが、どれだけいるでしょうか?

経営は足腰が必要です。経営基盤と呼ばれるもので、建物で言うと”基礎”のようなものです。この基盤が強ければ強いほど、外部環境に翻弄されにくい経営体質を作り上げることができます。この基盤の正体は…?

結論を言うと、”顧客の数(絶対数)”です。

経営や商売において、最も重要な指標である「売上高」。収益の源泉であり、お客様満足度を測定できる指標でもあります。

この売上高は、掛け算で表すことができます。様々な公式がありますが、マーケティングの観点からすると…。

売上高=客数 × 客単価

という公式です。ここで重要なのは「客数」という要素。客数は、「たまたまお買い上げになったお客様」ではなく、自社商品を”是非欲しい”として「わざわざお買い上げいただいたお客様」のことを指します。

このようなお客様を「顧客」と呼びます。別の言い方をすれば、「ファン」ということになります。

コロナ禍のような緊急発生的な経済情勢の時、”適応”という言葉で表される経営戦略は、実は「客数(顧客数)」を増やしていく地道な作業のことを言います(他にもあります…念のため)。

顧客数が月々、年々増えていっている会社は足腰(基盤)が強い!そして、一時的に売上がダウンしても、ファンは必ず戻ってきます。緊急事態が過ぎ去った後の回復力も早い。

困るのは日頃からお客様目線ではない商売に徹し、損得勘定・損得判断の経営をされている会社・企業です。

特にコロナ禍のような、経済情勢が到来すると「一人一人(一社一社)のお客様満足度に真摯に向き合っているか?」そして、「顧客(ファン)となってもらうような努力をしているか?」が問われます。

日頃の経営努力が試される機会となるのです。

投稿日: 2020年11月30日 | 7:48 am

足跡(あしあと)〜NIHILストーリー〜

佐賀市巨瀬町(こせまち)某所にある、フルハンドメイド・シューズの工房「NIHIL(ニヒル)」。今日は、代表の古賀幸仁(こうじん)さんとの作戦会議でした。革靴の工房と言えど、コロナ禍の影響を受けています。完全来店型の「NIHIL」では当然の現象なのでしょう。

NIHILはお客様にご来店いただくか、代表の幸仁さんが道具一式を抱えてお客様のところに出かけるか、どちらかの方法でないと製造に取り掛かることができません。なぜなら、”徹底した採寸”によるにより、お客様ひとりひとりの「脚の特徴」に合わせた「世界でただ一つの自分だけの靴」を創っているからです。

ミリ単位の違いを見逃さない”経験と感性”、妥協を許さない採寸作業は、NIHILブランドの「吸い付くようなフィット感」を完成させます。

NIHILで生み出される革靴(まさに芸術作品です)は、bespoke shoes(ビスポーク・シューズ)と言われるジャンルです。革靴の製造方法としては最高峰の製法で、セミオーダーやフルオーダーとは全く違う考え方と価値観から生み出されます。bespoke(ビスポーク)というのは、「会話をしながら」に由来していると言われており、お客様とまた「素材の皮革」との会話を重視する製法です。

「bespoke」という概念に、「NIHIL流 ハンドソーンウェルテッド製法」を織り交ぜた超高品質革靴は、一生履き続けられる「自分だけの革靴」として、お客様の心を掴んでいきます。

今日の作戦会議は、中長期を見据えたブランディング戦略についてじっくりと議論できました。

一切の妥協を許さない、「材料・材質のセレクト」「徹底した採寸と木型の製造」「試し履きによる度重なる修正」「経験に裏付けされた自信と覚悟」そして「技術」…。それは一足100万円を超える商品価値があると算定しています。

材料の皮革は、一足の受注に対して「皮一枚全部」を仕入れます。一枚の皮から、最適な部分を目利きして使用するところも、NIHILならではという超高品質の秘密。

年間の製造数は、完全セル生産のため20足しかできません。製造スタッフを雇用して分業制にすれば良いのではないか?と考えますが、それはできない。各工程の関連性を熟知していないと、「NIHILが醸し出す”吸い付くようなフィット感”」は実現できないのだそうです。

「ビジネスに徹するならば簡単。オーダーメイドという言葉を並べて、オリジナル感をお客様にお伝えすればいい…。だけど僕は、bespoke(ビスポーク)という最高峰の製法を極めて、本物を探究していきたいのです。」とは店主・古賀幸仁(こうじん)さんの言葉。

中小企業診断士として、寄り添いながら育てていきたい、小さな小さな工房です。

「NIHIL bespoke shoe」のギャラリー兼工房は、大人の空間です。店主が容れてくれた「ドリップコーヒー」を飲みながら、「世界でただ一つの自分だけの、一生ものの革靴」について会話してみませんか?

 

 

 

投稿日: 2020年11月26日 | 11:06 pm

『燃える人事考課制度』のメカニズムー13

【評価基準の制定方法−1 グラデーションの付け方】

久しぶりに人事考課制度について書きます。

”使えない人事考課制度あるある”の話をしましょう。評価基準を”言語化”せずに、段階を数字だけで表している評価制度があります。1〜5という段階が一般的ですが、1というのがどのような状態か…全く測定できない設定方法です。

測定するのが困難な人事評価は、評価点数がブレまくり考課されるスタッフのモチベーションが著しく下がります。

何度も言いますが、人事考課制度の目的を明確にしておかないと失敗してしまいます。失敗とは、”使えなくなる”という現象のことです。高いコストを投じて導入した制度が、全く使えなくなると悲劇です。

僕が推奨している”燃える人事考課制度”は、評価基準のグラデーションを重視しています。1の段階の評価をされたら、2の段階になるためには「どんな状態に成長すれば良いか?」を明確にしているのです。

この方法は、社員の成長プロセスを設定することと同様の効果をもたらします。人事考課制度は、”人を評価すること”が目的ではありません。”メンバーのモチベーションを上げること”が目的なのです。

人は明確な目標と、そこに至るプロセスが分かっていれば、自ら歩き出そうとします。成長プロセスが明確でもないのに「頑張れ!」と言われても、「何を頑張れば良いか分からない」という状態に陥り、モチベーションが下がっていきます。

また、「1の段階を踏まえて2に上がる」というルールも大切です。例えば、「2の状態がクリアできていないのに、4の評価点数をつける」ことはあり得ないのです。なぜ?成長プロセスだからです。

投稿日: 2020年11月25日 | 11:36 pm

中小企業診断士のマインドセットーARIKATA【43】

【中小企業診断士が成すコンサルティングサービス:事業承継支援②】

事業承継問題が中小企業を取り巻く深刻な課題となったのは、つい最近のことではないでしょうか?僕が経営コンサルティングの業界に足を踏みれた25年ほど前は、あまり取り沙汰されない課題だったと記憶しています。

ここ10年ほどの内に、かなり大きな経営課題としてクローズアップされました。同時に、M&Aを手がける企業や経済団体が数多く出てきたようです。

M&Aはともかく、円滑な事業承継を支援して後世に価値ある企業を残していくような支援をするのは、中小企業診断士の大きなミッションだと考えています。

事業承継でなかなか上手くいかないケースが、「親子による承継」だということ。意外かもしれませんが、親子であるがゆえの、しがらみや複雑な感情が入り乱れ、難航するケースがあります。そのため、中小企業診断士などの外部専門家が介在して、調整する価値が生まれるわけです。

大切なのは、「親子だから当然に承継する」のでなく「適格者がたまたま子供だった」というのが、理想的な承継理由です。事業承継の優先順位は、「その人物が適格者かどうか?」です。それがスタッフ(社員)であったり役員であったり、または実子であったり”たまたま”する訳です。

調整役である外部専門家(ここではあえて、中小企業診断士と言います)は、承継者のセレクトから動機付け、アナウンス、そして構想書・計画書の策定…承継者の育成や伴走型の軌道化支援…などなど、そのミッションは多岐に渡ります。

いずれにせよ事業承継に関する課題は、現経営者が承継を本格的に考え始める前から構想を練り、「承継キックオフの年から遡って、10年に及ぶ計画書策定」からスタートすることが重要です。

投稿日: 2020年11月24日 | 6:17 am

中小企業診断士のマインドセットーARIKATA【42】

【中小企業診断士が成すコンサルティングサービス:事業承継支援①】

後継者に悩む経営者が多いご時世です。事業承継と言う経営課題に、様々な政策的支援がもたらされ、国を挙げて応援するという姿勢も理解できます。それだけ、事業承継問題が深刻となっている証左でしょう。

こういう経営課題が噴出すると、”経営コンサルタントの出番!”ということになります。特に国家資格ホルダーである中小企業診断士は、この課題解決に対して果敢に立ち向かわなければなりません。

事業承継問題解決の1番のコツは、「早め早めの準備」という一言に尽きます。10年後の承継自体を見据えた構想・計画・シミュレーションを立案しておくことです。この10年に及ぶ構想立案に、中小企業診断士の出番があるのです。

事業承継問題を「M&A」(吸収合併・買収)によって簡単に解決しようとするコンサルタント会社がありますが、あえて言いたいことがあります。M&Aは、事業承継における優先順位ナンバー1戦略ではない!と。

中小企業診断士としては、「後継者を育て、あるいは見つけて事業理念を引き継いでもらう」道筋を描く支援をすべきです。事業承継は詰まるところ、理念の承継です。また、そこに集う社員・メンバー、取引先(関係先)、お客様…そして企業ブランドの承継です。

企業というのは、右から左に売買されるような代物ではない!

もちろん、M&Aを否定している訳ではありません。現経営者の手腕では、「永続発展が望めない」や「スタッフ(社員)の幸せが望めない」、そして「社内に最適な承継人財がいない」という場合に、はじめてM&Aを選択するべきです。

投稿日: 2020年11月22日 | 11:48 pm

商売を知らない人のための商売の話ー2

「商売(経営)は”やり方”が重要なのでなく、”あり方”が問われる営みである」。この言葉は、法政大学大学院時代の恩師の言葉から引用したものです。何事も動機が大切で、僕のような仕事をしていると「この人は商売がうまくいくな…」とか、逆に「かなりご苦労されそうだな…」などと、経験による独特の臭いを感じるようになります。

そして、その直感はかなりの確率で当たります。まさに、「あり方=マインドやハートといった想いに裏付けされた商売の姿勢」が分水嶺となるのです。

経営のノウハウは、勉強すれば身に付けることができます。しかし、ノウハウに頼ってしまうとテクニックに走った商売になってしまいます。商売で最も大切なのは、従業員目線とお客様目線そして(仕入れ先などの)関係先目線に合わせた運営をすること…です。最も大切なのは、Win-Win-Winの三方良し経営です。

もう一つ、商売はお客様からお金をいただきますよね。何かをお金に変えているわけです。「何をお金に変えていますか?」という問いをセミナーなどで参加者に尋ねると、「???」という反応をされる方がほとんど。

お金に交換しているのは、商品ではありません。商品というのは、商売をする人の”想い”を形にしたものに過ぎない。”想い”というのは、商売人の努力や頑張りのことです。いわゆる「価値(Value)」と呼ばれるものです。

「価値をお客様に届けて、お金をいただく行為」これが商売の本質です。

ビジネスモデルの作り方、マーケティング戦略の立て方、事業計画の立て方…もちろん大切でしょう。

その前に…学ぶべき「商人(あきんど)学」というものがあるのです。

投稿日: 2020年11月18日 | 10:55 pm