ブランディング・コンサルタントが考える人事の話ー3

報奨的昇進制度が、中小企業の人事戦略に多大な負の影響を及ぼすことを、前回主張しました。人材を人財に成長させる人事考課制度に関して提唱していきます。

多くの人事評価制度を見てきましたが、100点満点の制度などあり得ないことをお断りしておきます。特に人事関しては、なおさらです。人間は単純な生き物ではない。複雑な感情を持ち合わせています。些細なことが、大きくモチベーションに関わってくるのです。モチベーションは、中小企業経営のパフォーマンスに多大な影響を与えます。そういった意味で、人事評価制度というのは、練りに練った制度をオリジナルで創らないと諸刃の剣的な制度になってしまうのです。

まず、「人事評価」という言葉がよくありません。あくまでの「考課」です。課題を考えるという意味での「人事考課」という言葉が相応しい…と僕は考えています。

間違った人事制度は、評価項目(文言)が曖昧で、実に使いにくい。考課者(考課をする人:上司)の主観ができるだけ入らないような、評価項目を策定すべきです。これには、時間と手間が必要です。だからこそ、出来上がった制度が使いやすく継続しやすい制度に仕上がるわけです。

また、5段階の評価も良くない。段階はあくまで偶数にすべきです、そこで、僕が推奨する人事考課制度は6段階で制定します。

その方が中心化傾向を回避できます。奇数だとどうしても、中心の点数に集中しがち(5段階の場合3)になります。これでは、被考課者(考課される人:メンバー、スタッフ)のモチベーションも上がりにくいのです。

投稿日: 2022年12月29日 | 5:20 am

ブランディング・コンサルタントが考える人事の話ー2

人財という言葉は、昔からあったわけではありません。いまでこそ定着した「人財」という言葉ですが、以前は普通に「人材」と書いていました。それだけ、近年の中小企業経営においては、人の活躍にフォーカスした戦略を取る必要があります。作ったら売れるという時代が終焉を迎え、より「ヒト=人財の知恵や行動力」でオンリーワン化(ブランディング化)する環境になったことが伺えます。

中小企業経営にとって、人財活躍の環境づくりがとても重要です。だからこそ、間違った戦略実行は、取り返しのつかない事態を招きかねません。

今回は、間違いやすい戦略のひとつ「人事の昇進戦略」について提唱します。

よくある間違い戦略の代表的事例に「報奨的昇進制度の導入」があります。つまり、実績をあげたから昇進させるといった内容。ここに大きな間違いがあります。ここで昇進の定義をしておきましょう。昇進とは「役職がつく」ことを意味します。つまり幹部・リーダーとして活躍してもらうことを意味するわけです。

幹部・リーダーというのは、人間的な魅力(熱意や信用信頼、リスペクト)が必須です。実績をあげたからといって、安易に昇進させてしまうと、”ふさわしくない人財”が幹部・リーダーになってしまう場合が多い。こうなると組織的な不幸を招きます。

あくまでも昇進というのは、コンピテンシー(あるべき姿・ハートやマインド、スキル・知識)などを決めて、そこに到達した人財を登用するべきなのです。

ふさわしくない人材が、幹部になった結果、スタッフ(社員)の成長を鈍化あるいは阻んでしまった事例は、中小企業経営にあるなるな現象なのです。

 

投稿日: 2022年12月28日 | 5:21 am

ブランディング・コンサルタントが考える人事の話ー1

中小企業経営者が抱える多くの課題は、「カネ=資金・財務・業績」に関する事、または「ヒト=人財、採用と育成」に関する事に集約されると考えています。ただし、優先順位から言うとやはり「ヒト」の課題が第1であることに変わりはありません。

中小企業の経営資源は、唯一「ヒト=人財」であるからです。優秀な人財が揃っていれば、「カネ」も稼げますし、「モノ=商品・サービス」も開発・揃えることができるからです。「カネ」は全てが結果現象。優秀な人財採用と育成こそ、経営者最大の責務といえます。

中小企業経営において、「ヒト」の課題が最重要事項である以上、中小企業診断士も人財に関する課題と対峙する必要があります。

僕は日頃からブランディング・コンサルタントを自称していますが、人事制度や評価・考課制度に関する課題の多さを実感します。それだけ、人事に関する課題は、変数が多い。中小企業経営の主人公は明らかに「ヒト=人財」ですから、人財が活動活躍しやすい環境づくりこそ、大切なのです。

これまで多くの中小企業支援に携わってきましたが、間違った人事戦略の実態を散見するたびに、そこで働く社員の将来を憂いてしまうこの頃です。

社会保険労務士が中心となって策定した、あるいは人事関係のコンサルタントが支援して作られた人事評価・考課制度。中には素晴らしい出来栄えのものがありますが、多くの場合(8割以上)が、「なんじゃこりゃ?」と思ってしまう制度になっています。

次回から少しづつ、紹介・改善・方向指南の提唱をしていきます。

投稿日: 2022年12月26日 | 5:00 am

対処療法と予防療法

中小企業診断士をはじめとした、経営コンサルタントはある意味でビジネスドクター的な存在として比喩されます。なるほど、中小企業経営の課題ポイント(病状・症状)を診断して、見つけ出し処方箋やオペレーションを提示することは、医者的な存在と酷似しています。

ところが、中小企業診断士(経営コンサルタント)の存在は、医療的専門家(医者)と違う概念が必要です。それが、予防療法というものです。患者は医者にかかるとき、症状が出てからかかります。逆に言うと健康な時は、医者にはなかなかかかりませんよね。

歯科医がときどき予防歯科診療を勧めていますが、それも実生活では浸透していないのが現状です。

中小企業診断士はどうでしょうか?明らかに、予防療法の推進者ということが言えます。

中小企業経営では、対処療法を実施する時は、長期的な療法投下をしなければならない場合が多い。下手すると、手遅れという事態もあり得ます。

以前から主張していますが、中小企業診断士は「町医者」であり、また「漢方医」でなればならない。

町医者は、庶民のかかりつけ医として様々な病気に向き合います。また、漢方医は体質改善を信条としながら、長期的に患者に向き合います。漢方医学は、病気に負けない体質づくりを目指して、療法を施します。

まさに予防療法です。

病気にならない企業体質づくり、体質改善…。処方箋の提示…。これはまさに中小企業診断士のミッションと言えましょう。

逆にコストカッター的な経営コンサルタントは、外科医と言えます。対処療法を施す内科医とも違うのです。

投稿日: 2022年12月21日 | 5:11 am

M&Aは事業承継の一形態である!

先日のこと。僕のクライアントの社長から相談がありました。曰く、「最近大手コンサルティングファームが頻繁にやってくる。主な案内は、M&Aなんです」…と。そのコンサルティング会社は、かなり有名なM&A推進企業でした。あえて社名は伏せますが…。

資料を見せてもらいました。そこには、クライアント企業自体の推定金銭価値と、売却先候補企業のリストが書かれていました。

僕はM&A自体を否定していません。しかしながら、最初からM&Aありきを推進するコンサルティング企業には、違和感しかありません。このブログで何度も訴えていますが、M&Aは事業承継の一端にしか過ぎません。企業はあくまでも、優秀な社員(御子息含む)に承継していくべきなのです。

企業(特に中小企業)は、想いの集合体です。土地や建物のように無機質な物体ではないのです。右から左に売り捌き、手数料を受け取るM&A推進企業には、中小企業診断士として怒りさえ覚えます。

宇宙に行った大金持ちのように、さっさと企業を売却し、莫大なキャッシュを手に入れる…これも人生でしょう。

「うちの会社には、有望な後継者はいない。独自のノウハウや資産はあるが、後継者がいないために今後の運用が心配だ…」そんな悩みに初めて登場する選択肢が、M&Aなのです。

M&Aを成立させて、売り手買い手から手数料を受け取るコンサルティング会社。数内やデータ、業績で査定し、売り買いを成立させる…。一見美しいようですが、まずは自社が永続発展できる「自社内承継のための施策」を考えてみませんか?

 

投稿日: 2022年12月19日 | 8:31 am

粗利益率1%の重み

減収時代の昨今、高付加価値経営への転換は中小企業経営において、生き残るための絶対条件であると言えます。安易な低価格経営は、百害あって一利なし…。自社の経営を圧迫していくだけです。

業績拡大路線を考案する前に、優先順位として取り組む価値のある戦略が「粗利益率向上」経営です。粗利益率(売上総利益率)というのは、ブランディングにも直結する勘定科目です。

例えば売上高が、1億円あったとしましょう。業態は小売。粗利益率が30%の経営をしていたとします。粗利益額は3000万円ですね。

この粗利益率を1%上げてみましょう。300万円の利益が創出できる訳です。2%粗利益率が向上すれば、600万円の利益貢献ができます。

売上至上主義で推進するよりも、粗利益率向上・確保経営が中小企業には相応しい。

基本的な戦略は、「無理のない増収戦略(売上拡大戦略)を取りつつ、ブランディング経営で価格主導権を握り、高付加価値経営を推進する」です。

間違っても増収傾向の見栄えを良くするために、低価格戦略を展開しないようにしましょう。中小企業経営は、長期的視野でオペレーションしていくのが基本であり、一度低価格戦略に慣れてしまうと、それは麻薬のように社風に蔓延していきます。

粗利益率1%…たかが1%ですが、されど1%です。粗利益を上げるためには、商品・サービスのブランディング・シーズを磨き上げて、高付加価値経営を実現するようにしましょう。

投稿日: 2022年12月14日 | 5:46 am

売上を短期で上げるって???

決算期が近づいていくにつれて、計画予算との業績乖離が目立っていき、途方に暮れるような気分になる経営者がおられます。毎月の業績PDCAを実施しているのいるのは、とてもいいことです。しかし、目標が高すぎるとさまざまな経営判断を誤ってしまう要因になることは、本ブログで主張しているとおりです。

経費や利益目標との乖離が、激しくなってくると、短期間で売上を上げるような行動を取りがちになります。中小企業経営において、短期で売上を急激に上げる方法があれば、正直教えて欲しいと思います。

あるとすれば、一点です。それは、安売り…あるいは、低価格販売につながる販促戦術です。実はこれ、最大の禁じ手です。

売上という勘定科目は、膨張指数です。つまり、いくらでも膨らませることができるのです。プライスダウン戦略で、短期的に売上をあげたとしましょう。行き着くところは、粗利益が確保できない経営。つまり、利益を圧迫していく、負の循環経営ということになります。

短期間で売上をあげるような、無理あるオペレーションは、無理あるコスト管理につながり、いいことはひとつもありません。

売上という収益源は、長期的な視野でじっくりと上げていく取り組みこそが重要なのです。

短期的に売上を上げる???って、莫大な広告費をかけますか?それも、中小企業経営は限界があります。

以前のブログにも書きましたが、業績が苦しくなると、作戦会議もそっちのけで「全員営業!」を掲げ、現場で売上を上げることに注力していく経営者の末路は悲惨ですよ。

 

投稿日: 2022年12月12日 | 5:02 am

経営理念にブレないメンタルを…

コロナの収束が見えてきたこの頃ですが、中小零細企業におけるコロナ影響は、これからが本番というところでしょう。これまで返済猶予を受けていた企業も、そろそろ本格的な返済がスタートしてきます。これまでの企業努力が試されるのは、本当に「これから」なのです。ひとつ、コロナ禍における経済環境において、さまざまな評論家(診断士にもいましたが)が、アフターコロナは劇的に価値観が変化する…などの主張をしていました。

ところが、収束が見えてきたこの頃、中小企業経営においての価値観は変わっていますか?もちろん、変化はしているでしょう。それは時代の流れとも言えるのです。DXによる効率化は進んでいくでしょう。それはコロナの影響というより、時代が求めているモノ。

中小企業経営においては、これまでの経営の価値観が劇的に変化している訳ではないのです。

中小企業経営の基本は、これまでも。これからも「経営理念」にマッチしたさまざまなオペレーションを、ブレずに推進していくこと。業績が低迷しているときは、ついついテクニックに走り、目の前の業績向上にブレてしまう傾向があります。

企業経営は永続発展が理想であり、利益を追求することが目的ではありません。長期的な安定した業績を叩き出していくためには、ブレないオペレーションが重要です。

そのためには、経営者・幹部がブレないメンタルを発揮して、現場を導いていく覚悟が重要なのです。

目の前のオペレーションに捉われすぎると、「客離れ」という恐ろしい現象を招きかねません。

投稿日: 2022年12月5日 | 8:30 am

その商売…「志(こころざし)」はありますか?

一にも二にも、商売というものは志が大切だと思う今日この頃です。これまで、実にさまざまな経営者の方々と、対話し、観察し、時にご支援してきました。志(こころざし)なき経営は、結局は行き詰まり、結果的業績も悪化していきます。

一方で、志を表現した「経営理念」は掲げているのに、行動の原点(動機)が損得勘定で、ただの標語になっているというケース。これはもっと始末に負えない。

そういった薄っぺらな経営をしていると、すぐに見透かされますし、呆れられるのです。この現象は、誰に直接影響を及ぼすか?

自社の社員に多大な影響を及ぼし、経営者への忠誠心は著しく減少しいきます。

いつの時代でも、経営は「金儲け」が目的ではない。経営は「関わる全ての人を幸せにする」活動であり、業績(金儲け)はあくまでも結果現象なのですから。

経営者の皆様。あなたの会社は理念浸透する試みを実施していますか?

我が社の目的を文言化した「経営理念」の意味、そこに込められた想い…その共有化と行動への反映を図っていくこと。これは重要な経営者の仕事です。

そのためには、経営者自身が「志」に忠実でなければならない。経営者が、社員から「志(経営理念)と違うことを言うし、行動するね」と思われた途端に、会社へのロイヤリティ(忠誠心)は失われていき、モチベーションが下がっていきます。

社員のモチベーションが下がると、業績にすぐに現れてきます。業績というのは正直で、現状の経営努力が正しいかどうかを表す重要なバロメーター。

落ちていくのは早いですが、一度落ちた業績を回復させるのは時間と覚悟が必要ですよ。

投稿日: 2022年11月29日 | 8:32 am

中小企業診断士(経営コンサルタント)は現場に行け!

中小企業診断士の資格試験はある種独特で、通常の国家資格にあるような法律関係の問題は少ないです。「経営法務」と言う科目がありますが、会社法や知的財産関係の法律問題が主です。マクロ経済学から、ミクロ的な経営学まで幅広く、マーケティングの試験問題が出題される国家資格は診断士くらいでしょう。

マーケティングの学習の中に、各種フレームワーク(SWOTやVRIOなどの分析手法、成長マトリックスなどの戦略立案など)があります。そのためか、中小企業診断士の中にはフレームワークに頼って(それだけで)クライアントに助言するような輩がいるから困ったものです。

勘違いしてもらっては困るのですが、フレームワークは所詮フレームワーク。真の課題は現場にあります。メーカーなら工場に、卸なら倉庫や営業現場に、小売店なら売場に…常に現に赴いて、五感を研ぎ澄ませて現場観察し事実確認することからスタートするのです。

ヒアリングだけで経営診断など絶対に不可能!ヒアリングした情報は二次的情報だからです。中小企業診断士は常に一次的情報を把握して、強み・弱みを把握し、外部環境を掛け合わせて戦略立案する…。そう頭の中は常にSWOT分析です。が、そこにインプットする情報は、確実に一次的情報!

自らの目で見て、耳で聴いて、匂いを嗅いで、触ってみてあ、味わってみる…その現場確認でしか得られない貴重な、生きた情報なのです。

現場に行き、現場の空気を感じ、現場で起きていることを観察するこを怠ると、的外れなコンサルティングを提案してしまうのです。

投稿日: 2022年11月21日 | 5:09 am

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